【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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ヨルダンの食事事情と平和への祈り

ヨルダンには、国民誰もが大好物で、国民食とも呼べるような料理があります。煮込んだぶつ切りの羊肉を熱々で山盛りのご飯の上に乗せ、その上からヨーグルトソースをかけて食べる「マンサフ」という料理です。もともと遊牧民が、家族の誕生、結婚式、卒業式、家族が長旅から帰還したときにお祝いとして、また客人をもてなすときに食べていました。大皿を大勢で囲んで、手で食べるのが流儀とされているこのマンサフ、ヨルダン人の誰に聞いても嫌いと言う人はいません。いえ、正確には、私の周りに数人「あまり好きじゃない」と答えたヨルダン人がいたのですが、よくよく聞いてみると、「ついつい食べ過ぎておなかが苦しくなってしまうから好きじゃない」のだそうです。食べ過ぎるってことは、結局は好きなんですよね?

ヨルダン人の大好物、マンサフ!

ヨルダン人の大好物、マンサフ!

マンサフには不思議な力があり、たとえ部族同士が対立していても、マンサフを囲んで一緒に食べればどんな問題も解決するそうです。確かに、マンサフをおなかいっぱい食べると、何だかとても幸せな気分になります。満腹感と、乳製品であるヨーグルトソースが眠気を誘うだけなのだと思いますが。

マンサフのほかに、ヨルダンでは「クナーフェ」というお菓子がよく食べられています。日本ではあまり想像がつかないかもしれませんが、砕いたピスタチオなどのナッツをまぶした弾力のあるチーズを、小麦粉を細かい麺状にした生地ではさみ、甘いシロップをかけて食べます。おおざっぱにいうと甘いチーズパイといったところでしょうか。日本だとスイーツは女子の食べ物と思われがちですが、こちらでは男性も普通に食べます。というよりも、男性の方がスイーツに貪欲かもしれません。お菓子屋さんで行列を作って並んでいるのは男性、買った直後に友人たちと路上でスイーツをほおばっているのも男性です。ためしにクナーフェ好きのヨルダン人の男性同僚に「日本ではスイーツは女性が食べる物だと思われてるんだよね。」と話したら、「え~、何で男が食べたらいけないの~?」と目を丸くしていました。ところ変わればこんなにも文化が変わるものですね。

ヨルダンの街並み

ヨルダン(アンマン)の街並み

ヨルダンは多くのパレスチナ難民を受け入れてきました。政情が不安定な周辺国とは裏腹に、ヨルダンではイスラム教徒とキリスト教徒が平和に共存しています。町を歩いていると、イスラム教の礼拝所であるモスクと教会が向かい合って建てられていることもしばしばで、この共存こそがヨルダン人の誇りとするところです。この国ではキリスト教徒は6%と少数派ですが、4月の棕櫚(しゅろ)の日曜日*(1)近隣のエジプトの教会で爆弾テロがあった際、ヨルダンのキリスト教徒を我々の手で守るのだと、イスラム教の青年たちが声をあげました。復活祭の礼拝が行われる間、イスラム教徒は教会の前に立ち、テロリストの侵入を阻止しようと呼びかけました。この記事を目にしたとき、私もとても勇気づけられました。しかしこの安定こそが、皮肉にもヨルダンを不安定化へと導く要因にもなっています。

ヨルダンではパレスチナ系の人々が70%を占めると書きましたが*(2)、それ以前にもオスマントルコ帝国から逃れてきたアルメニア系の人々や、帝政ロシアの拡大に伴いコーカサスから移住してきたチュルケス人等を受け入れてきました。そして現在、平和なヨルダンには隣国シリアの国籍を持つ方々が約127万人滞在しています。そのうちの約半数が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に登録した“正式な”シリア難民です。難民といえば広大な難民キャンプに難民だけがかたまって住んでいるというイメージが浮かぶと思いますが、ヨルダンでは事情が異なります。実に8割以上のシリア難民がキャンプの外で生活しているのです。難民が流入したことで都市部の家賃が高騰したり、学校が二部制になったりしてヨルダン人の生活にも影響が出てきました。ワールド・ビジョンをはじめとするNGOや国連機関は難民だけでなく、難民流入の影響を受けているヨルダン人も対象に支援を行っていますが、資金不足もあり、十分ではありません。

支援先の学校の先生と筆者(左)

支援先の学校の校長先生と筆者(左)

難民が祖国に帰還できる日が一日も早く来るように、また昔から戦禍を逃れてやってきた人々を温かく迎え、異なる民族や宗教の共存を可能にしているヨルダンの安定が永遠に続くようにと願っています。

シリア難民の子どもたちと筆者(右)

シリア難民の子どもたちと筆者(右)

*(1) 棕櫚(しゅろ)の日曜日…キリスト教用語で、復活祭の一週間前の日曜日

*(2) 筆者は、こちらの記事に先立ちキリスト新聞(8月1日)に掲載された記事の中で、「現在まで数世代にわたって難民として生きているパレスチナ人がいる一方、ヨルダン政府はヨルダン国籍を希望とするパレスチナ難民には国籍を与え、ヨルダン人と同じように扱ってきました。パレスチナ系の人々は現在ではヨルダン国民の70%を占めると言われています」と言及しています

*こちらの文章は、キリスト新聞(8月11日)に掲載された記事を転載したものです

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【関連ページ】

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この記事を書いた人

渡邉 裕子
渡邉 裕子ヨルダン駐在
大学卒業後、一般企業に勤務。その後大学院に進学し、修了後はNGOからアフガニスタンの国連児童基金(ユニセフ)への出向、在アフガニスタン日本大使館、国際協力機構(JICA)パキスタン事務所等で勤務。2014年11月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。
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