【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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「愛にできることはまだある」心ひき裂かれた日のこと

「神の心をひき裂くもので、私の心をひき裂いてください」
これは、ワールド・ビジョンの創始者ボブ・ピアスの祈りです。はじめてこれを聞いた時、胸に響いてくるものがあったのですが、それよりも自分は「心を引き裂かれるなんてごめんだな」というのが正直な気持ちでした。

私は2011年にワールド・ビジョンで働き始め、以来、世界の子どもたちが置かれた厳しい状況を日本の皆さんに伝え、支援の輪を広める働き(ファンドレイジング)を担当しています。この仕事のために、支援地域の中でも特に厳しい環境に置かれた子どもたちを年に1~2回取材に訪れるようになりました。

「心を引き裂かれるなんてごめんだな」と、ボブ・ピアスの祈りをはじめて聞いた時には思った私でしたが、(そう祈らなかったにも関わらず)心を引き裂かれる日が訪れました。先日、「ライフライン」というテレビ番組でワールド・ビジョンの働きについて紹介いただく機会があり、その時に「この日のこと」についてお話したので、よろしければ番組の動画もご覧ください。

「ライフライン」2020年11月14日放送

心ひき裂かれた日のこと

それは2015年の夏、バングラデシュで一人の女の子に会った日のことでした。

女の子の名前はモスミ(10歳)。首都ダッカのスラムにおばあさんと2人で暮らしていました。複雑な事情で両親それぞれが家を出ていき、モスミだけがおばあさんの元に残されました。
読み書きなどもできなかったモスミのおばあさんに仕事はなく、モスミがゴミ山に出て、売れるものを集め、それを売ったお金で二人の食べ物や必要なものを買い、生活していました。

彼女は毎日、たった1人でゴミ山へ出かけます。いつも車が渋滞し、車の間を猛スピードのバイクやリキシャが縫うように走る道を、小さな女の子がたった1人で。しかも、「裸足」で。

バングラデシュで出会ったモスミ(10歳)このゴミ山で売れるものを探し、それを売って生活している

バングラデシュで出会ったモスミ(10歳)。このゴミ山で売れるものを探し、それを売って生活している

ゴミ山は、嗅いだことのない強烈な腐敗臭が立ちこめ、大きな水たまりには奇妙な泡が湧き、正体不明のガスが発生していました。一瞬、長靴を履いて立っている自分の足にさえ害が及ぶのではないかと恐怖が襲いました。勇気をもって一歩踏み出すと、そこにたかっていた無数のハエが一気に飛び立ちます。

ゴミ山を見上げると、大人たちが大きな声を上げながら我先にと売れるゴミを探し、その脇で重機が何台も同時に作業していました。「巻き込まれる人も多い。でも、ここでは誰もそんなこと気にしない」

ゴミ山で働く人は「汚い仕事をする者」として差別され、弱い立場におかれた女性や子どもが暴行などの被害にあうことも多いといいます。そんな危険な場所で、モスミは1人で働いていました。

重機に巻き込まれそうになりながらゴミ山で仕事をする人々とモスミ

重機に巻き込まれそうになりながらゴミ山で仕事をする人々とモスミ

「一人で、怖くない?」
首をふって「ナー(いいえ)」と、モスミは言いました。

本当に1人で怖くないのでしょうか。いや。怖いと感じてしまったら、ここでは生きていけないのかもしれません。

ゴミ山で誰かにひどく扱われないか、裸足の足は大丈夫か、彼女の命の危うさを心配しながら、自分だけがホテルに戻ることに後ろめたさを感じながらも、「とにかく、生き延びて」。祈るような気持ちで、眠れぬ夜を過ごしました

「愛」にできることはまだある

帰国してもバングラデシュで見た光景が頭から離れませんでした。映像や写真では見たことがあったスラム。ゴミ山で暮らす人というのも、テレビで見たことはありました。
でもあの日、目の前にいた女の子はリアルで、裸足の足から血を出しながらそこに立っていて、一緒に笑いあったり歌ったりして、別れ際には抱き合って泣いたりもしました。

あれから5年たった今も、その感覚は消えていません。

モスミ(10歳)と筆者 ゴミ山にいないときの彼女は天真爛漫に笑ったり歌ったり。無邪気な女の子でした

モスミ(10歳)と筆者 ゴミ山にいないときの彼女は天真爛漫に笑ったり歌ったり。無邪気な女の子でした

ワールド・ビジョンで働き始めたばかりのころ、胸を打ったボブ・ピアスの祈り。「神の心をひき裂くもので、私の心をひき裂いてください」私の心は、モスミに会った時、この祈りのように「引き裂かれ」たんだと気づきました。

神はこの地上をご覧になって、心を引き裂かれる思いをされているのでしょう。モスミのような小さな女の子が厳しい環境で生きざるを得ないことを見て。神が愛する子どもたちが、辛い思いをしているのを見て。

「神の心を引き裂くもの」の正体は「愛」なんだと思います。それは私がモスミに対して感じた愛の、何万倍も何億倍も、比較できないほど大きなものなのだろうと思います。

私が持てる愛はそれに比べたら、ほんの小さなものでしかありません。それでも、たとえ小さくても、今、自分にできることをやり遂げる。それが、「心を引き裂かれたもの」としての責任なのかもしれないと、今は感じています。

たとえ小さくても、愛にできることはまだある。まだまだ。たくさんあるはず。そう信じて。

ファンドレイジング担当
山下 泉美

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この記事を書いた人

WVJ事務局
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