【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

Read Article

世界の子どもの未来のために ~レアちゃん(9歳)がほんとうに言いたかったこと

ワールド・ビジョン・ジャパンは、厳しい貧困に生きる子どもたちのことを日本のみなさまに知っていただくため、ドキュメンタリー番組「世界の子どもの未来のために」を制作しています。この番組制作のために7年間、撮影クルーとして支えてくださった林恭子さんが、世界の子どもたちとの出会いを通して感じた想いをブログにしてくださいました。

ワールド・ビジョン・ジャパン制作テレビ番組「世界の⼦どもの未来のために」
取材 構成:林 恭子

紛争や貧困、自然災害…厳しい環境に生きる子どもたちのことを日本のみなさんに伝えるワールド・ビジョン制作のテレビ番組『世界の子どもの未来のために』

わたしは2013年から番組づくりに参加させていただいています。今年のカンボジア篇まで、アジアアフリカの国々でたくさんの子どもたちと出会い、その日常に寄り添い、7年にわたって制作を続けてきました。
わたしの仕事は、「声を聞くこと」です。子どもたちやその家族へのインタビューを通して、その子がどんな毎日を送り、どんなことを感じているかを知り、それを撮影する仕事です。

しかし、辛い毎日を送る子どもたちの「声」を聞くというのは、簡単にはいかないことがほとんどです。

貧困学校に行ったことがない子どもたちの中には、辛い気持ちをどんなに訴えたくても、自分の状況や感情を表現する言葉を知らない、という場合もあります。そして、また別のケースでは、家族を気遣うばかりに、ほんとうの気持ちを封印してしまっているということもあります。

撮影の合間にカンボジアの子どもと遊ぶ林恭子さん

撮影の合間にカンボジアの子どもと遊ぶ林恭子さん

家族の前では言えない想い

今年8月、カンボジアで出会った少女にもまた、母親を思うあまりに、言えない気持ちがたくさんあるのではないかと感じました。線路際に密集するスラムで生まれ育った女の子、レアちゃん、10歳です。

レアちゃんは、厳しい貧困の中に生まれ、きちんと学校に行くこともできないまま、家計を支えるために毎日、貝を売っていました。彼女にインタビューしている時、私は「楽しいことは何?」と尋ねました。

すると彼女は、離れたところから見守っている母親を見てから「貝を売ること」と答えました。それまで、はにかんだように小さな声でポツリポツリと話していたのに、はっきりした声できっぱりと。母親を恐れて言っているようには感じられませんでした。
それから、何を聞いてもじっとだまりこんでしまいました。

わたしたちは、その日、彼女をずっと見ていました。
朝、その日売るための貝を仕入れて、遠くまで大きなカートを引いて歩き、貝を売り続けるレアちゃんの姿を。

激しい交通のある道を、行き交う車すれすれに、痩せた小さな身体で重いカートを引いて歩く時。
大通りの喧噪の中、大人たちに囲まれて、声も出せずに貝を売る時。
売れ残った貝をじっと見つめて帰路に着く時。
彼女の目は真剣で、一生懸命なその肩はあまりにもか弱かった。笑顔を見せることはなかった。

貧困という壁で狭められた小さな世界で戦っている、その中で強く生きようとしていると感じました。友だちと遊ぶ時間は無く、学校へ行って学ぶ機会もなく、自由な時間はありません。一日の休みも無く、ずっと家族のために働いている。でも、母親を支えるために自分にできることは、自分が貝売りをがんばることだとわかっている。だから、強い目をして「貝を売ることは楽しい」と答えたのかもしれないと思いました。

すべては、ほんとうの声はその仕草に、目に、現れていると感じました。そして、それをあますことなく聞き取らなければ、と。

線路脇のスラムで出会ったレアちゃん(9歳)

線路脇のスラムで出会ったレアちゃん(9歳)

わたしの仕事は「声を聞き、助けを呼ぶこと」

私たちは、胸が痛くなるのをこらえながら、レアちゃんをずっと撮り続けました。今すぐ駆け寄って助けてあげたい、という思いがこみ上げてきますが、今この瞬間だけでなく、この現実を変えるためには、この子の明日も明後日も、ずっと変えようとするならば。彼女の孤独やがんばりや、どうしようもないこの時を、しっかり撮って伝えなければ。

わたしの仕事は、「声を聞き、助けを呼ぶこと」なんだ。
そのことをあらためて自覚した瞬間でした。

カンボジアには特別な思い入れがあります。7年前、この仕事に初めて参加して最初に訪れた地であり、スラムという厳しい環境に足を踏み入れ、まさに一人目の子どもに出会った場所だからです。この原点とも言える地点で、もう一度自分の仕事の意味を思い出しました。

「声を聞き、助けを呼ぶこと」。

誰かが「声」に気づき、手をさしのべてくれた時。ひとりの子どもの未来に一粒の希望がもたらされます。
その時、この世界はほんのちょっと良くなる。

これまで、たくさんの子どもたちの辛い現実を見てきましたが、助けを得て、笑顔になった子どもたちにもまた、たくさん出会ってきました。ほんの少しずつでも、そんな風に世界がよくなっていくのを見続けていたい。

子どもたちの声を聞き、助けを呼ぶ仕事。

その声は必ず聞き届けられ、助けの手が差し伸べられると信じてこの仕事をつづけていきたい、とカンボジアの地であらためて願いました。

大人に囲まれ声も出せずに貝を売るレアちゃん

大人に囲まれ声も出せずに貝を売るレアちゃん

************
レアちゃんのような子どもたちのために、今、あなたにできることがあります。
チャイルド・スポンサーになって、子どもたちを支えていただけませんか?
1日150円で子どもたちの未来を支える支援 チャイルド・スポンサーシップ

【撮影クルー林さんの過去のブログ】
世界最貧国ネパール スラムの少女 ~子どもたちの夢が消えてしまう前に~

【関連ブログ】
サッカーボールと、溶けたアイス~カンボジアのスラムで出会った少年の意外すぎる行動(撮影に同行した山下スタッフ)
世界の子どもの未来のために、僕にしかできないこと(番組ディレクター 菅さん)

この記事を書いた人

WVJ事務局
WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
Return Top