【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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子育て卒業を迎えた、お母さんへ

「浅野さんのチャイルドのサンダーちゃん、結婚したので、支援卒業になりますよー」と、突然同僚に告げられたのは昨年6月。一瞬、なんのことか理解できず、ポカンとしてしまった。だって、彼女はまだまだ小さな子どもだったはず。結婚だなんて、早すぎる。

せめて”結婚おめでとう”を伝えたい、とか、お別れの手紙は送れないのか、とか、いろいろワガママを言ってみたが、同僚は「浅野さん、気持ちはわかりますが。。。」とちょっと困り顔。

ごもっとも。わかってる。チャイルドとの関係にはいつか終わりがくるもので、私の場合、チャイルドの引越しなどによるお別れがなく10年以上もご縁が続いたことは本当に恵まれている。小さな子どもだと思っていたけれど、彼女が7歳の時から支援を始めてもう12年。19歳になった彼女はミャンマーでは十分な適齢期。でも、突然すぎて気持ちはすっきりしない。それに自分が19歳だった頃のことを思うと、この歳での結婚はやっぱりとても早く感じられる。

2002-03年、駐在員としてミャンマーに暮らし、今年で開始から12年を迎えるタバウン地域開発プログラム(ADP)の立ち上げ準備を担当した。この地域の変化と成長を、そして子どもたちの行く末を見守りたい。そんな願いから、日本へ帰国後、ミャンマーのチャイルド・スポンサーになることを希望し、ポー・サンダーちゃんが紹介された。

ミャンマー駐在時に支援地域の子どもたちと(筆者は中央、2000年に撮影)

ミャンマー駐在時に支援地域の子どもたちと(筆者は中央、2002年撮影)

初めて彼女の「成長報告」を受け取った時、てっきり一人で写った写真が送られてくるのかと思ったら、母1人、娘3人が写った写真で、私より若くあどけない表情をしたお母さんが印象に残った。

そういえば、この子にはお父さんがいなくてお母さんだけで育てられているんだった、とチャイルド情報を思い出した。あれから12年。結婚という節目により、女手一つの娘の子育て卒業を迎えたお母さんは、今、どんな気持ちなのだろう。

最初に受け取った「成長報告」の写真

最初に受け取った「成長報告」の写真

3回目の「成長報告」を受け取ったとき、ポー・サンダーちゃんがもう9才になるのにまだ小学校へ行けていないことがわかって気になり、現地に問い合わせてもらった。すると、お母さんは家族を支えるために他の人の土地で農作業を手伝っていて、それがとても不便な場所なので、サンダーちゃんが学校へ行けていない、とのことだった。その後しばらくして、お母さんは仕事の場所を変えることができて、ポー・サンダーちゃんも学校へ行けるようになった、と報告を聞いて安堵した。

そもそも、ポー・サンダーちゃんが住むミャンマーのタバウン地域は、どこへ行くのも徒歩か、特別な場合には牛車、雨期には地域一帯が浸水するのでボートという交通手段になる場所。子どもたちの通学にかなりの時間と、時には冒険も伴うことは、自分が駐在していた時の経験からよく知っている。そんなタバウン地域の中でも、学校へ行けないほどの「不便な場所」って果たしてどんな場所だったのだろう。。。そこまで仕事を選べないほど追い詰められていたのだろうか。。。と、当時はお母さんの事情を想像していた。

19歳で結婚したポー・サンダーちゃん。もうすぐ自分も「お母さん」になるのかもしれない。ポー・サンダーちゃん結婚までの成長は、お母さんにとってどんな歩みだったのだろう。シングルマザーだった自身を顧みて、今は、ポー・サンダーちゃんがパートナーと末永く元気に仲良くやっていけることを願っているのだろうか。

最後に受け取った「成長報告」の写真

最後に受け取った「成長報告」の写真

高等教育を受けることは難しい農村地域で、なんとか中等教育までは進むことができたポー・サンダーちゃん。自分が生まれ育った地域で健やかに育ち、次の世代へ命をつないでいく存在になっていくことが、今、彼女の前向きな希望になっているのだったら、嬉しい。

「ポー・サンダーちゃんのお母さん、チャイルド・スポンサーシップによる支援は、貴女のお力になれましたか?一人で3人の子どもを育ててきた貴女の重荷を少しは軽くする手伝いができましたか?」

と尋ねてみたい。子どもの健やかな成長は、お母さん(保護者)の子育てニーズを支えることなしに実現しない。国と環境は違っても、私自身が日本で子どもを授かってから12年間、本当に多くの人に支えてもらいながら、なんとか歩んできた道のりから痛感している。

娘の結婚を迎えて子育てを終えたお母さんに、ポー・サンダーちゃんを育てて嬉しかったこと、大変だったことを、「本当にお疲れ様でした」という気持ちを届けながら聴いてみたい。日本で子育てしている母親として。そして、お母さんの深い愛情にはとてもかなわなくても、サンダーちゃんの幸せという共通の願いをもって支援を続けてきたチャイルド・スポンサーとして。

生計向上支援により自分の収入で家計に貢献できるようになって喜ぶ母と小学校に通う子供(バングラデシュ)

生計向上支援により自分の収入で家計に貢献できるようになって喜ぶ母と小学校に通う子ども (バングラデシュ)

マーケティング第1部
コミュニケーション課 課長
浅野 恵子

チャイルド・スポンサーシップとは

この記事を書いた人

WVJ事務局
世界の子どもたちの健やかな成長を支えるために、東京の事務所では、皆さまからのお問合せに対応するコンタクトセンター、総務、経理、マーケティング、広報など、様々な仕事を担当するスタッフが働いています。
NGOの仕事の裏側って?やりがいはどんなところにあるの?嬉しいことは?大変なことは?スタッフのつぶやきを通してお伝えしていきます。
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