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置かれた場所は途上国|“千の丘の国”と呼ばれるルワンダ

■「千の丘の国」と呼ばれるルワンダ

ルワンダ共和国は、アフリカ大陸の中央に位置し、日本の九州より小さい面積に1100万人の人口を抱えている。
アフリカといっても、標高1500m以上の高地にあるため、1年を通じて湿度が低く、気温が20-30度で非常に過ごしやすい。
ルワンダは”A country of thousand hills”(千の丘の国)と称されるほど山や丘が多く、小高い場所から遠くを眺めると、山々がどこまでも続く美しい景色を見ることができる。

山々が続く景色

山々が続くルワンダの景色

自然豊かなルワンダだが、多くの方は映画「ホテル・ルワンダ」(原題”Hotel Rwanda”2004)で取り上げられた1994年のジェノサイド(大虐殺)のことを思い起こすのではないだろうか。

23年前の4月7日、当時のハビャリマナ大統領が乗っていた飛行機が撃墜されたことを発端に、わずか100日間の間にツチ族と穏健派のフツ族が100万人以上(当時の全人口の約12%)も殺されたといわれている。更に、200万人以上が難民となって国外に逃れた悲惨な歴史である。助けを求めて逃げ込んだ教会に集まっていたところを襲われたというケースもあり、その教会は今でも記念館として当時の生々しい様子が保存されている。

しかし、現在のルワンダは、そうした過去の出来事を思い出せないほど平和で、発展している。

国の発展を、経済成長や平均余命など、社会的な側面も考慮して指標化する国連人間開発指数(Human Development Index)でみると、ルワンダは1990年から2015年の25年間で、世界で最も指標が改善した国となっている。一人あたり国民総所得は240米ドル(2000年)から700米ドル(2015年)まで急成長し、首都には高層ビルが建ち、スマートフォンが普及し、インターネットが至るところでつながるようになった。
一方で、車で30分も走ると、地方の農村には電気や水道などの社会インフラが十分に整備されていない地域が多く残されている。今後は、国全体にどうやって発展の果実を行き渡らせることができるか、が課題である。

ルワンダでは毎年4月7日から1週間、ジェノサイドを忘れないための追悼週間がもうけられ、様々なイベントやコミュニティでの集まりが行われる。世界中で民族を背景とした争いがなくならない中で、ルワンダが過去の悲劇を忘れずに、平和を訴え続けることには大きな意味がある。すべての人にとっての生活の根本には平和があるということを、改めて思わされている。

地域住民の声を聴く筆者(中央)

地域住民の声を聴く筆者(中央)

 

■街中がきれいなルワンダ ーゴミが落ちていない理由は?

ルワンダを訪れた人がまず驚くのが、街や道端にゴミが落ちていないこと。交通量の多い首都キガリの道路だけでなく、地方の道端にもゴミが散らかっているところをほとんど見かけない。

他のアフリカ諸国では道端にごみを見かけることが多いため、そうした国と比較して、このルワンダの街の美しさに多くの人が驚きと感動を覚えるという。ルワンダの街や道路がきれいに保たれている理由は人々の美化意識が高い、ということもあるが、実はそれよりも、毎月1回行われているルワンダならではのある「取り組み」にあるのではないかと思う。

「取り組み」とは、「ウムガンダ」(Umuganda:「ともに働く」の意味)と呼ばれるコミュニティサービス(奉仕活動)である。日本でいうところの町内会による活動のようなものだろうか。しかし、それは自主参加ではなく、参加が義務付けられているところが特徴だ。

清掃活動を行う住民たち

「ウムガンダ」と呼ばれる奉仕活動を行う住民たち

毎月最終土曜日の午前中、国全体でこの活動を行うことが決められている。この日は、緊急車両や空港に行く車両以外は道路を通行することすら禁止される、という徹底ぶり。各村のリーダーがその日の活動内容を決め、それにしたがって住民たちが行動する。都市部では、ゴミ拾い、清掃、道端や公共スペースの草刈りなど、農村部では、草刈りや、特に貧しい世帯の住宅の修復を行う。これは、よほどの事情がない限り、欠席することは許されない。

このようにして、この国の美しさは保たれている。

清掃などの活動の後に行われるコミュニティミーティングも重要で、政府からの通達や、村の中で起きている問題を共有する場となる。私が参加した農村部のウムガンダでは、流行しているバナナの伝染病の注意点や、毎日体を洗って清潔に保つことの重要性などが、政府の人から伝えられていた。一方で、都市部のウムガンダでは、いわゆる「自治会費」の不払い問題や、地域内のもめごと(世帯間での金銭トラブル)のようなことまで話し合う。
こうしたミーティングは、住民の間で情報共有し、コミュニティ意識を醸成する上で、非常に重要な機会となっている。

ルワンダ政府が設けた自助の精神を培うルールと、ルワンダ人の真面目な気質とが相まって、ウムガンダという取り組みは、ルワンダの発展の一翼を担っていると言ってよいであろう。

支援地の子どもたちと筆者(中央)

支援地の子どもたちと筆者(中央)

*こちらの文章は、キリスト新聞(2017年7月1日)に掲載された記事を転載したものです

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この記事を書いた人

望月亮一郎支援事業第1部 部長
神戸大学国際協力研究科地域協力政策専攻修了。民間企業を経て、外務省専門調査員在ザンビア日本大使館にて勤務。同国の経済動向の調査および援助協調を担当。その後、JICA専門家としてマラウイ財務省において開発援助プロジェクトのモニタリング能力向上のための技術協力を行う。2011年3月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。東日本大震災緊急復興支援部で緊急支援を担当。2012年7月より支援事業部において、ベトナム、東ティモール、マラウイを担当。2015年10月から2018年9月までワールド・ビジョン・ルワンダ駐在。帰国後はアフリカ地域のプログラムを担当。2023年9月より支援事業第1部 部長として事業の管理に従事。
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