【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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子どもを想う力 ~もうすぐクリスマス

週末、2歳の長男と外で遊び、手や顔を真っ赤にして家に帰る。
寒さが身に凍みる今、熱くて甘いココアで体を温め、ぼうっとする時間は至福だ。

ほっと一息つきながらココアを飲んでいると、ふと思い出される冬の光景がいくつかある。
小学生の頃、サッカーの試合後、保護者が作ってくれたココアを飲みながら友だちと過ごした時間。センター試験を目前に控え、高校からの帰り道、ちょっとナーバスになりながら自販機で買った缶で手を温めながら帰っていたあの頃。色々な場面がよみがえってくるが、いつも思い出すのが、6年前、青年海外協力隊時代に南米のボリビアで過ごしたクリスマスだ。

首都ラパスを離れ、おんぼろのハイエースを改造した乗合バスに揺られながら進むこと約1時間半。標高3,000mを超える山間の村にある小さなカトリック教会で開かれたクリスマス会に僕は参加した。この村出身で今は町で働く若者が自発的に企画し、毎年神父さんと一緒に開いているささやかなクリスマス会だ。教会の周りに住む100人弱の子どもたちが集まり、みんなで一緒に歌を歌ったり、踊りを踊ったりする。僕も日本の歌を教えたり、折り紙を持って行って、みんなで一緒に折って楽しんだ。

ボリビアでのクリスマス会にて

ボリビアでのクリスマス会にて

クリスマス会にはケーキやフライドチキンといったご馳走やプレゼント等はなく、出されたのはパン1つとホットチョコレート(ココア)1杯だけ。パンも特別なものではなく、庶民の食卓に毎朝上る、いつものやつだ。それでも、子どもたちは友だちと一緒に同じものをほおばり、教会の会堂は賑やかなおしゃべりの声と笑顔の花で満ちる。クリスマス会の経費は全て若者たちの自腹だ。
「昔、自分たちも地域の先輩にクリスマス会をしてもらったんだ。この村は経済的に豊かではないし、僕らも収入が多いわけではないけど、こうして地元の子どもたちとクリスマスを祝えるのが嬉しいんだ」配膳をする若者の顔からは、心からの満足感が伝わってくる。

喜びは、分かち合うと、そして自分から与えると、何倍にも膨れ上がる。カップの底に溜まったココアの固まりを眺めながら、ボリビアで教えてもらった大切なレッスンが思い出された。

あれから年月を経て、今はワールド・ビジョンのスタッフとして、そして一人のチャイルド・スポンサーとして、「喜びを分かち合うこと」「与えること」の大切さをあらためて確認している。

出張で訪れたルワンダでは、土壁でできた薄暗い家の中で、日本のスポンサーから送られた手紙を受け取り、満面の笑みを浮かべる少女に出会った。一通の手紙が、少女だけでなくその家族にもスタッフにもこれほど喜ばれるなんて…。激しい雨がトタン屋根に打ちつけ、騒々しい雨音に包まれる中、心には静かな感動を覚えた。

日本のスポンサーからの手紙を受け取り笑顔を見せるルワンダの女の子

日本のスポンサーからの手紙を受け取り笑顔を見せるルワンダの女の子

またケニアでは、かつて支援を受けていた子どもたちが大人になり、教師、医師、またワールド・ビジョンのスタッフとして、生まれ育った故郷や他の地域の子どもたちのために日夜奮闘している。 「与えてもらった」という思い出が、「今度は自分が与える側に」という強い願いに変わっていった様子に、この支援活動の意義を見た。

そして、日本でも、チャイルドや支援地域とのつながりを喜び、ワールド・ビジョンの働きを応援してくれている多くの仲間に出会えた。この輪がさらにさらに広がっていってほしい。

目を上げると、長男が牛乳をおかわりしている。クリスマスが何だかハッピーな時みたいだと感じ、「ジングルベル、ジングルベル」と口ずさむようになった今日この頃。彼が大きくなったら、「昔、父さんはボリビアでな・・・」なんて言いながら語り合いたい。でも、まずは何よりも、このクリスマスが彼や世界の子どもたちにとって喜びのときとなってほしい。
サンタのように口の周りを牛乳で白くした長男を見ながら、そう強く願う。

 

ルワンダの子どもたちと筆者

ルワンダの子どもたちと筆者

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何もかもはできなくとも、何かはきっとできる
チャイルド・スポンサーを募集しています
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この記事を書いた人

松岡拓也支援事業第1部 人道・開発事業第1課 課長
東京外国語大学英語科を卒業。民間企業勤務を経て、青年海外協力隊としてボリビアに赴任。帰国後、日本貿易振興機構アジア経済研究所開発スクール(IDEAS)で学ぶ。
2012年にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。2017年から2021年までカンボジアに駐在し、日本政府、企業、個人のご支援による複数事業の管理に従事。
現在、スペイン語通訳として地域の学校等でも活動。保育士。防災士。
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