【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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マーケティング×農業×アフリカ ~ルワンダ農家の収入向上を目指して~

はじめまして。

今年3月に入団いたしました菊田諭と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
支援事業部で、アフリカ地域のプロジェクトを担当しております。

現在ワールド・ビジョン・ジャパンでは、ルワンダ東部の農村部で、国際協力機構(JICA)の草の根技術協力という枠組みの助成金と皆さまからの募金により、地域の農家の収入向上を目指す取り組みをしています。先日、支援事業の実施状況を確認し、今後の事業の方向性に関してルワンダのスタッフと議論するため、現地に出張しました。

これまで、農家の収入向上を目指すプロジェクトというと、「生産技術向上のための指導や、灌がいなどの整備を通じて、生産できる量を増やす」、それによって「売却できる量が増えて農家の収入が増える」、という考えの支援が多かったのです。このような支援が成果をあげるためには、生産した農産物が従来と同程度以上の価格で売却できる、指導によって向上した生産技術が維持される、整備された灌がい施設が維持される、などの前提条件が成り立つ必要がありました。しかし、そうした条件が成り立たないケースもあり、違ったアプローチで生産者の収入向上を実現することを目指そうと考えて、この事業を実施することになりました。

今回の事業(ルワンダでの農業生産者グループ支援)では、農業に関する知識・技術が依然として重要なものであると考えながらも、農業生産物を有利に販売できるような環境をつくること、また、農産物のマーケティングに関する知識を得た農家グループが、栽培作物の選択や販売ルートの選択を経済合理的に行えるようになることを目指します。

集団で政府から借り受けた土地で比較的大規模な栽培を行っている様子。栽培する作物は、低湿地であるか乾燥地であるかといった農地特性と作物との相性や、生産者の栽培経験の有無を参考にして決められていることが多い。

集団で政府から借り受けた土地で比較的大規模な栽培を行っている様子。栽培する作物は、低湿地であるか乾燥地であるかといった農地特性と作物との相性や、生産者の栽培経験の有無を参考にして決められていることが多い。

ルワンダでは、全世帯の93%が農業に携わっており、多くの農家は、世帯ごとに狭い土地で生産した農産物のうち、家族で消費する分以外を販売して、それによって得られた収益を生活費の一部に充てています。一方、農家でグループを組んで、政府や個人から土地を借り受けるなどして農業を営み、生産物を分け合ったり販売したりする場合もあります。そのため、マーケティングに関する知識を生かして、商品価値が高い作物を栽培することや、生産物がより高く売れる販路を見つけられるようになれば、家計はより楽になります。そして、そのお金を家族の健康や教育に使ったり、生産活動への投資や貯蓄に回したりと、それぞれが必要だと考えるものに使うことができるようになるでしょう。

ある農家グループが経営するパッションフルーツ農場。地主から借りた農地で栽培している。パッションフルーツが高値で取引される商品作物であることに目を付けて栽培を始めた。課題は販売先。現在は、より高値で売れる青果市場ではなく、ジュース業者に出荷している。

ある農家グループが経営するパッションフルーツ農場。地主から借りた農地で栽培している。パッションフルーツが高値で取引される商品作物であることに目を付けて栽培を始めた。課題は販売先。現在は、より高値で売れる青果市場ではなく、ジュース業者に出荷している。

ルワンダを訪れて目の当たりにした事業の成果と課題は以下のようなものでした。

まずは、1年半かけて取り組んできた事業の成果から。

農家にとって有利な販売ルートとなる集荷所を運営する流通組合が組織されました。近隣の農家は有利な価格で集荷所に出荷することができるようになり、流通組合はまとまった量を首都の市場に出荷することによって、近隣の市場に出荷するよりも高値で売却できるようになりました。これによって、流通組合が農家から買い取る際の価格を以前の相場よりも高くすることが可能になり、農家の販売価格は、集荷所設立前に比べて、キログラム当たり44%上昇しました。また、この組合は、これまで周辺の小規模業者があまり払っていなかった、政府への税金も率先して払っています。この流通組合は、本事業による呼びかけで自主的に設立されたものなのですが、現在はこの成功例にならって同様の組合を設立する動きが複数出てきています。これが実現すれば、より多くの農家が有利な価格で出荷できるようになると予想されます。

集荷所の前で「国際的な流通業者になるまで事業を育てたい!」と熱く展望を語る流通組合の代表(左手前)。ルワンダ周辺では国境を越える陸路の物流が行われていて、そこに参入し生産物の国際的な流通を担う業者になりたいと考えている。

集荷所の前で「国際的な流通業者になるまで事業を育てたい!」と熱く展望を語る流通組合の代表(左手前)。ルワンダ周辺では国境を越える陸路の物流が行われていて、そこに参入し生産物の国際的な流通を担う業者になりたいと考えている(筆者は右端)。

一方で、今後に向けた課題もあります。

一つ目。現地社会のマーケット事情を十分に把握しなければなりません。例えば、事業を実施している農村における農産物の流通には、まだ私たちが知らない訪問買い取り業者が関与しているらしいのです。また、そのような業者には資本を提供しているボス的な存在がいるとの情報もあります。そうした情報を的確に把握したうえで、地元の人たちにとって利益になる事業を行っていく必要があります。

二つ目。農家の生産物出荷価格を飛躍的に高めた流通組合ですが、集荷所で農家から作物を買い取る際の価格が安すぎるのではないかという懸念が出ています。農産物を売却する農家の利益だけでなく、流通組合の事業の継続性や組合員が適正な待遇を受けられるようにすることも大事です。そうした観点から、買い取り価格、売買する農産物の種類、販売先(首都の市場以外の販路)などを共に検討して行くことが必要です。

浮かび上がってくる課題の解決に取り組み、ルワンダのみなさんのためになる事業を展開していけるよう精一杯取り組んで参りますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

最後までお読みいただきありがとうございました!

ルワンダ支援地域の農家の生計を支えるパッションフルーツ。実は熟すと赤くなり、甘酸っぱくおいしいジュースとして流通する。

ルワンダ支援地域の農家の生計を支えるパッションフルーツ。実は熟すと赤くなり、甘酸っぱくおいしいジュースとして流通する。

この記事には書ききれなかった内容がたくさんありますので、この事業についてもっとお知りになりたい方は、ぜひ本事業の報告イベントに足をお運びください!

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この記事を書いた人

菊田 諭
菊田 諭
岩手大学(社会科学専攻)を卒業後、宮城県公立高校の公民科教員となり、高等学校と特別支援学校で計13年間勤務。東日本大震災に際して、日本中・世界中の人たちから一生忘れられない支援を受けたことが契機となり2012年3月に退職して国際協力の道に進む。またこの年に世界を巡る旅に。2013年から青年海外協力隊員としてスリランカに2年間赴任し、すべての人が障がいのあるなしに関わらず、学ぶことや働くことができる社会をつくるために尽力した。
2015年7月から、英国LSE(London School of Economics and Political Science)に留学し、社会政策と開発学〔NGO〕修士(MSc Social Policy and Development〔NGOs〕)を取得。学業のかたわら、車いすユーザーを支援するケータイアプリ(Wheelog「みんなでつくるバリアフリーマップ」)開発のためのリサーチ業務に従事。
国際協力NGOセンター(JANIC)でのインターン、評価コンサルタントとしての業務を経て、2017年3月にワールド・ビジョン・ジャパンに入団。プログラム・コーディネーターとしてアフリカ地域での事業の企画・実施監理・評価と、リサーチ業務を担当している。日本評価学会認定評価士。
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