【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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置かれた場所は途上国|カンボジア 前編:「社会での成功」の指標は収入?

エネルギーにあふれた国

わたしは2011年9月から2016年6月まで5年9カ月間、人身取引の地域プログラム・マネージャーとして、カンボジアの首都プノンペンに駐在し、拡大メコン地域6カ国(中国南部、カンボジア、ラオスタイミャンマーベトナム)に従事しました。カンボジアに駐在する以前に、タイで6年間生活した経験があったため、昔の古巣に戻るような気持ちでカンボジアに移動したのですが、タイと国境を接するカンボジアとはいえ、さまざまな面でタイとは違い、移動した当初からいろいろな驚きとチャレンジに遭遇した日々になりました。

自転車で通学するカンボジアの子どもたち

自転車で通学するカンボジアの子どもたち

カンボジアに駐在し始めた当初、わたしは毎朝トンレサップ川とメコン川の沿岸から20分程度トゥクトゥクに乗って、事務所に通っていました。通勤路には王宮があり、王宮の前には人々がお参りできる祠が設置されています。その前にたくさんの人々が集まり、お花とお線香を備え、お祈りをしています。王宮の前を通り過ぎると、道の両側に散髪をする露店が立ち並ぶエリアに差し掛かります。そこでは大人も子どもも(なぜか男性が多かったのですが)椅子に座って散髪をしてもらっており、これを見るのも毎朝の恒例行事でした。その他、大きなビニール袋いっぱいに野菜やパンや雑貨など、さまざまなものを詰め込み、バイクの前と後ろと両側に積んで移動する人。後部席の両側に鶏を何羽もつるして市場へ向かう人。子豚を括り付けて移動する人など、人々の生活が何にも覆われることなく、むき出しで目の前で繰り広げられており、生きるエネルギーを直接感じながら、「カンボジアはエネルギーにあふれた国だなぁ」と感じました。

満員の通勤電車に乗って、朝から疲れた人々が、暗いトーンの洋服を着て活気もなく移動する東京の朝を思い浮かべ、カンボジアの未来がなんだか輝かしいもののように見えるものでした。

「社会での成功」の指標は、収入

英語を話すカンボジアの若者(つまり外の世界へのアクセスがある人たち)はチャンスに対して非常に貪欲で、いかに人よりも前に出るかということを意識して毎日生活している様子が見て取れました。「自分たちにはチャンスがなかなかないのだ」と、仲良くなったカンボジア人がよく言っていました。彼らの家に遊びに行って日々の生活に触れると特に、生きるために一生懸命戦っている様子を目にすることができます。

しかし同時に、そのチャンスを手に入れる際、あまりにも目先のことにとらわれているのではないか、とカンボジアに駐在する外国人駐在者の間で議論することもありました。つまり、キャリアアップを考える際、仕事の中身というより給料の額で決定することが多く、職歴を見ると仕事の内容に統一性がなかったり、高給の仕事に運よく就いてもスキルが追いつかず長続きしなかったり、いわゆるジョブ・ホッパーになってしまうことが多いのです。

わたしが職場の上司/先輩として転職の相談を受けた際、転職先が確実にキャリアアップにつながるいい仕事だと思っても、仕事に従事する時間が増えるのに対して給料が上がらないのであれば彼らにとっては意味がなく、あっさりと断ってしまいます。そのような様子を見るにつけ、特に優秀なカンボジア人であればあるほど残念に思うことがありました。しかし、わたしたちが使う「キャリアアップ」という言葉は、やはりある程度生活に余裕があるから成り立つ考え方なのかな、と考えさせられます。

支援者からの手紙を読む子どもたちとカンボジアのスタッフ

支援者からの手紙を読む子どもたちとカンボジアのスタッフ

30年以上カンボジアで働くある先輩スタッフは、わたしがそんなことをつぶやくと「そういう背景もあると思うけれど、同時に、カンボジアにはいわゆるロール・モデルとなる一世代上の大人がいないので、自分がどういう大人になりたいか、どういう職業人となりたいかを具体的にイメージすることができないことも問題だと思う。結局『社会での成功』の指標を、いくら収入があるかでしか見られなくなるのだと思う」という趣旨の説明をしてくれ、説得力のある話だなと思いました。

ロンドン大学オリエンタル・アフリカ研究科でカンボジア研究の専門家として教鞭をとる知人は、クメール・ルージュ前のカンボジアに調査に来たことがあり、当時のカンボジアには社会秩序があったと話していました。カンボジアでは、目に見えるもの、見えないもの、さまざまなものがクメール・ルージュによって破壊されたということを、実感をもって感じる瞬間でした。

(後編へ続く)

*こちらの文章は、キリスト新聞(3月1日、11日)に掲載された記事を転載したものです

 

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【関連ページ】

カンボジア:国情報
世界の問題と子どもたち:人身売買

この記事を書いた人

池内千草
池内千草
東北大学大学院修士課程修了後、私立高等学校にて英語講師として勤務。その後タイ王国チュラロンコン大学大学院タイ研究講座を修了。タイの東北地方の農村にて調査・研究を行い、NGOと女性の織物グループの形成をジェンダーの視点から考察した。2003年から2006年までの3年間、タイの国際機関(UNODC, UNAIDS, UNESCAP)や日本のNPOなどでインターン・コンサルタント・国際スタッフとして契約ベースで勤務。帰国後、千葉の財団法人、海外職業訓練協会にて、APEC・ASEAN域内諸国を対象とした、人材育成フォーラムや技能研修などの研修事業に携わった。2008年2月ワールド・ビジョン・ジャパン入団。2010年10月より2016年6月まで人身取引対策事業のためにカンボジアに駐在。現在、支援事業部 開発事業第1課配属。
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