【スタッフ・ブログ】国際NGO ワールド・ビジョン・ジャパン

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シリアの子どもたちの夢を取り戻す―ただ生きるためではなく、学ぶために

こんにちは。ワールド・ビジョン・ジャパンから派遣され、ヨルダンに駐在してシリア国内の事業を監理している渡邉裕子と申します。

シリア難民の子どもたちを学校に受け入れてきた校長先生と筆者

シリア難民の子どもたちを学校に受け入れてきた校長先生と筆者

ヨルダンに赴任して2015年春から2019年夏までヨルダン国内にいるシリア難民やヨルダン人の子どもたちの支援を行ってきましたが、2019年の8月からシリア国内支援の担当に変わりました。今までシリア国内いくつかの地域で事業を実施してきましたが、外務省によるシリアへの渡航制限のため、残念ながら私はシリアに入国して事業の進捗を確認したり、シリア人の同僚や受益者の方々と直接お会いしたことがありません。シリア国内の状況を見ていると、私のような外国人がシリアへ行けるのはまだまだ先になりそうです。

そのため、皆さんはすでに想像していらっしゃるかもしれませんが、仕事は遠隔監理で主にメールやネットを通じた音声通話でやり取りをしながら進めています。ワールド・ビジョンで働いていると、いろいろな専門知識を持った同僚と仕事をすることになります。最近は教育を担当しているシリア人でシリア国内で働いているムスタファという同僚とよく仕事をする機会がありますが、先日彼が仕事の傍らこんな話をしてくれました。

内戦で遠ざかってしまった夢

ムスタファは2011年に大学の英文学部を卒業しましたが、その同じ年にシリアで内戦が始まりました。内戦が始まる前は、一緒に大学に通っていた英文学部の同級生と同じように、大学を卒業したら好きだった英語を教える教師になりたいと思っていて、ゆくゆくは語学学校を開いて多くの子どもたちに外国のことを知ってもらうのが夢だったと話してくれました。ですが、内戦で夢が遠ざかってしまいました。

内戦により子どもたちは勉強どころではなくなり、教育システムが崩壊して教員の給与も支払われなくなってしまいました。ムスタファを含め多くの若者が教員になる夢をあきらめました。ムスタファには自分の同級生たちがその後夢をかなえることができたのか、現在どうやって暮らしているのか、知る由もありません。なぜなら同級生の90%以上が亡くなってしまったか、もしくは国外へと逃れて音信不通となってしまったからです。

昨今では日本でも新型コロナウイルスの影響で同窓会などの集まりが控えられていると思いますが、内戦から11年が経過してしまった今、彼のようなシリアの人々にとって同級生との再会なんて夢のまた夢なのです。

シリア国内の避難民キャンプ

シリア国内の避難民キャンプ

「生き延びること」以外の夢を持てるように

ムスタファが心を痛めているのは、今シリアにいる子どもたちが抱いている夢や願いについてです。今、国内避難民として暮らしている子どもたちには故郷の記憶もないから故郷に戻りたいという夢は抱いていない。ただ日々紛争を生き延びる「サバイバル」が唯一の願いで、そしてせめて基礎教育を終えたいというのが子どもたちの夢なのだと。

ムスタファの現在の夢は、そういった状況にある子どもたちに一人でも多く教育を受ける機会が与えられるよう、環境を整えることです。

シリアでは爆撃によって多くの学校が破壊されてしまいました。倒壊寸前の危険な校舎で勉強している子どもたちがたくさんいますが、倒壊寸前でも近くに学べる学校がある子どもたちは幸運なほうなのかもしれません。近くに通える学校もなく、教育を受けらずに大きくなっていく子どもたちが大勢います。

破壊された学校

破壊された学校

ワールド・ビジョン・ジャパンでは教育へのアクセスを少しでも改善するため、シリアの子どもたちのためにマイルストーン・プロジェクトという事業を立ち上げ、学校修復の活動を始めることになりました。ムスタファの夢はたった一人の夢ではありません。多くのシリア人の親や子どもたちが抱いている夢でもあります。

一人でも多くの方にこのメッセージが届き、シリアの子どもたちが抱いている夢がただ「生き延びること」ではなく、教育を受けて一人ひとりが将来の可能性を最大限に活かして大切な人生を歩んでいけるようになってほしいと願っています。

渡邉 裕子

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この記事を書いた人

渡邉 裕子
渡邉 裕子ヨルダン駐在 プログラム・コーディネーター
大学卒業後、一般企業に勤務。その後大学院に進学し、修了後はNGOからアフガニスタンの国連児童基金(ユニセフ)への出向、在アフガニスタン日本大使館、国際協力機構(JICA)パキスタン事務所等で勤務。2014年11月にワールド・ビジョン・ジャパン入団。2015年3月からヨルダン駐在。
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